2020年6月23日未明、WWDC20においてAppleは「Apple Silicon(アップルシリコン)」を発表しました。
これにより、Macの心臓部であるCPUはこれまでのIntel製から自社開発のApple Siliconへと順次置き換えられることになります。
ここで問題になるのがOSの設計(その他アプリケーション類も含む)
小難しい話は私も理解不十分なので簡単に言うと、Intel製のCPUを搭載するMac向けに作られて来たmacOSはApple Siliconを搭載するMacでは動作しない、と "まずは" 思ってください。
そのため今後はmacOSも、あるいはそこで動作するソフトウェアもApple Siliconを搭載するMacで動作するようにプログラミングすることになるけど、そうすると今度は当然のことながら既存のIntel製CPUを搭載するMac上では動作しない、ということになってしまいます。
仮にApple Silicon対応のmacOSが10月1日に発売されるとして、それじゃその日を境にIntel Macは見捨てられるのか、あるいは10月1日までにApple Siliconを搭載するMacへの買い替えなければならないのか……というと、もちろんそんなことはなく、14年ほど前にあったこんな事例(以下参照)とほぼ同じような経過措置が取られることになるはずです。
PowerPC CPUからIntel CPUへ
Steve Jobs CEO(当時)がそれまでのPowerPC(IBM)を捨ててIntel製CPUを搭載するMacに切り替えると発表したのが約15年前のWWDC 2005でのこと。
MacintoshへのIntel製CPU搭載をジョブズCEOが宣言
その約3ヶ月後の2005年4月にIntel CPU搭載のMacに(も)対応したMac OS X 10.4 Tigerがリリースされています。
このMac OS X 10.4 Tigerは先ほど "(も)" と書いたように、Intel CPUを搭載するMacに対応すると同時に、それまでのPowerPCを搭載するMacにも対応するハイブリッド版でした。
この仕様は翌々年の2007年に発売されたMac OS X 10.5 Leopardにも引き継がれましたが、さらにその翌々年の2009年にリリースされたMac OS X 10.6 Snow LeopardでPowerPC対応を辞めてIntel Mac専用の仕様となりました。
従ってPowerPCに対応するOSが提供されていたのはMac OS X 10.6 Snow Leopardが発売される直前の2009年8月下旬頃までということになるので、OSとしてPowerPCからIntelへの移行に掛かる時間的猶予は2005年1月からの約5年間、ということになりますね。
追記:上記、LeopardとSnow Leopardの発売年を間違えていたので修正しました、すみません
Intel Macの発売状況は?
2006年1月から8月まで、約半年強の期間を経て全てのMacがIntel仕様に置き換わりました。
iMac
- 2006年3月、PowerPC版(iMac G5)を終売。
- 2006年1月、Intel版の発売を開始。
Mac mini
- 2006年2月、PowerPC版を終売。
- 2006年2月、Intel版の発売を開始。
Power Mac/Mac Pro
- 2006年8月、PowerPC版(PowerMac G5)を終売。
- 2006年8月、Intel版の発売を開始、ブランド名をPower MacからMac Proへ。
iBook/MacBook
- 2006年5月、PowerPC版(iBook G4)を終売。
- 2006年5月、Intel版の発売を開始、ブランド名をiBookからMacBookへ。
PowerBook/MacBook Pro
- 2006年2月、PowerPC版(PowerBook G4 15-inch)を終売。
- 2006年4月、PowerPC版(PowerBook G4 17-inch)を終売。
- 2006年1月、Intel版(15-inch)の発売を開始、ブランド名をPowerBookからMacBook Proへ。
- 2006年4月、Intel版(17-inch)の発売を開始。
環境激変を緩和する救済環境:Rosetta
Mac OS X 10.4 TigerにはRosetta(ロゼッタ)という救済プログラムが盛り込まれていました。
これはIntel Mac上で動作するMac OS X 10.4 TigerでもPowerPC向けのプログラムが動作するように設けられた『同時通訳』みたいなものです。
お陰でユーザ側としてはMac本体の買い替えと同時にPowerPC向けのアプリケーションも全て一気に買い直さなければならないという『家計が火の車』事態を回避可能に。
RosettaがOSに備わっていたのはMac OS X 10.6 Snow Leopardまでで、2011年リリースのOS X 10.7 Lion以降はPowerPC用のアプリケーションは使えなくなりました。
移行状況のまとめ
Mac本体
ハードウェアはIntelへの移行が発表された2005年1月の約1年後から順次切り替えが行われ、2006年中旬までにIntel Macへの置き換えが完了しています。
OSアップデートへの対応は、動作環境を満たしていれば2007年発売のMac OS X 10.5 LeopardまでPowerPC Macにインストール可能でしたが、次のMac OS X 10.6以降はIntel専用仕様のためPowerPC Macでは利用できなくなりました。
アプリケーション
早々にIntel Macへ買い換えたとしても、PowerPC向けのアプリなどはRosettaが廃止された2011年7月発売のOS X 10.7 Lionにアップデートしなければ続けて使用できていました。
ただし2013年9月のセキュリティアップデートがMac OS X 10.6 Snow Leopardとしては最後のアップデートになっているので、セキュリティ上の懸念などを考慮するとここから数ヶ月後くらいがPowerPC環境の限界だと言えそうです。
なので2005年の移行発表から2013年一杯までの約8年はなんとか粘れた、てことかな?
Apple Siliconの場合はどうなる?
前例通りに計画されているとすると:
Mac本体
過去の例に倣うなら2021年初頭からApple Silicon Macへの移行が始まり、中旬までには移行が完了することになりますが、iMac ProやMac Proの超ハイエンド機までもが早々に移行を終えられるかは少し疑問があるので、完全に移行が完了するのは2021年末かWWDC22の直前くらいかもしれないですね。
アプリケーション
PowerPCの時と同じように、macOS 11では "Rosetta 2" が提供されることは既に発表されています。
説明を読む限り、先代のRosettaのように単純なPowerPC>Intelへの変換レイヤーではなくLinuxなども動作可能な仮想環境のようなので、以前のRosettaよりも息の長いモノになるかもしれません。
仮に先代Rosettaと同じ提供期間になるとしたら約6年後の2026〜2027年まではIntel Mac用のプログラムは動作することになりますが、果たしてどうなんでしょうね。延々とIntel CPU用のプログラム互換環境を提供し続けるというのは非現実的な気がしないでもありません。
最終的なまとめ
macOSはおそらく2021年秋にリリースされるであろうmacOS 12(仮)がIntel Macでネイティブ動作する最後のOSになって、2022年秋のmacOS 13(仮)からはApple Silicon Mac専用仕様になると思います。
また、macOS 12(仮)の公式サポートが終了するのは恐らくリリース3年後の2024年になるでしょうから、Intel Macの健全性を保てるのは2024年が限界でしょう。
そんなこんなの諸々を考えると、2022年から2024年頃までをひとつの『買い替え時期』として今後の計画を立てる目安にするのが良いように思います。
安い買い物ではないし、無理やり買い換えさせられるという気がしないでもないですが、これは古いAppleユーザの多くがこれまでに(多くて3回)経験していることなので諦めるしかありません、苦笑
かくいう私にとっても頭の痛い話です(^-^;